6-4.実習
遺伝カウンセラーになるには、大学院在学中に病院実習をしなければなりません。
遺伝カウンセラー認定試験を受ける際は実習記録簿に教授のサインをもらって願書に添付しないと受験資格が得られません。
どういう疾患を〇例、合計で〇〇例実習に出なくてはならない、という風にノルマが決まっていて、なんでもいいから実習をすれば良いという訳にはいかないのです。そんなわけで、学生は必死に実習に出ます。
私の大学院には大学病院が併設されていたので、希望すればいつでも実習できる状態にありましたが、病院が併設されていない大学院は結構大変みたいです。
教授がいろんな病院に「学生実習させてください。」と頼みに行くそうなのですが、コロナのため受け入れ病院が少ない状況だったようです。
受け入れ病院が決まっても、学生は大学を休んで病院実習に行くわけなんですが、実習先で結構肩身が狭い思いをしたという話も聞きました。
そういった意味では、大学病院が併設されている大学院は実習には有利なのではないでしょうか。
実習の内容は「陪席実習」と言って、病院の職員さん(遺伝専門医や遺伝カウンセラー)の実際の遺伝カウンセリングを邪魔にならない様に隅で見学させてもらい、
会話の内容や、どんな遺伝子検査を行ったか、等を詳細にメモします。
ただ陪席だけすればいいというわけではなく、陪席する前には患者さんの情報や疾患などについて事前に調べて、いつ教授に突っ込まれても答えられるように準備しておく必要があります。
この準備には数時間、長ければ数日かかります。
ただ疾患だけを調べればいいわけではなく、遺伝疾患ですから、病気の機序、例えば染色体の数的異常なのか、だとしたら何番染色体のどういう数的異常なのか?とか、
それとも遺伝子自体の変異が原因なのか、変異の種類は何か?
そしてなぜそんな変異が起こるのか?その疾患についての最近の論文に目を通しているか、など、教授に聞かれるので、準備する必要があります。
それと、患者さんの「家系図」というものを書いて、ご家族のどなたが他に同じ病気になっていらっしゃるかとか、そういった情報をまとめて図にする作業があります。ご興味のある方は「医療家系図」でググるといっぱい出てきます。私はパワポで作っていましたが、言いたくないけどこれが結構面倒くさい作業なんですよ…慣れないと2,3時間はかかります。手書きできるアプリを探したりしましたが、なかなか良いなと思えるものがありません。
陪席が終わったら、私がいた大学の病院では、遺伝カウンセリングの内容の「議事録(患者さんや医師らがどんな会話のやり取りをしたか)」を保管しておく必要があったため、聞き取りが終わったメモをwordに書き起こす、という事もしました。これも割と時間がかかります。
それらが終わったら、自分の実習内容を、遺伝カウンセラー認定試験に必要な「実習記録簿」に詳細に記入します。
陪席実習、やることがてんこ盛りです。