遺伝カウンセラーを目指す方へ

お仕事選びは人生選び

7-3.医療関係者や理系出身者でなくてもできるが、数学の知識は必須

さて大分シビアな事を書いてきましたが、日本において、遺伝カウンセラーがやるべき事、遺伝カウンセラーしかできない事というものがあると私は考えます。

 

それは「データベースに強くなる、数学に強くなる」という事です。

 

遺伝診療では、患者さんの疾患の最新情報を調べる際、色んなデータベースを見る必要があります。

 

世界には遺伝子についてだけでも数百のデータベースがあって(大体英語表記です)、それぞれデータの内容に個性があります。

 

また、そのデータベースは信用できるものなのかをちゃんと見分ける必要もあります。

 

もちろん医師もそういうデータベースを日々チェックしながら遺伝カウンセリングに臨んでいますが、医師は色々と忙しいので、素早いキャッチアップが難しい状況にあります。

 

遺伝カウンセラーは、こういったデータベースやそれらに記載されている論文の数字(どういう統計を使って有意差を出したのか?これホントにちゃんとした統計使ってるのか?論文自体が怪しくないか?を見分ける)に強くなり、遺伝カウンセリングをする際は、医師と情報共有に努め、時には医師と議論をするのが理想ではないかと思います。

 

データベースから得られたエビデンスを用いて医師と対等に議論が出来る様になる事は、患者さんの未来のため、自分の遺伝リテラシーを高めるためには必須です。

 

 

もう1つ、数学に強くなる、という事ですが、、

遺伝医学を学ぶ人は誰でも読む「トンプソン&トンプソン遺伝医学」

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に、疾患のリスク評価をする章があります。

 

患者の血縁情報を鑑み、患者さんが発症するリスクを計算するのです。

 

この計算には「条件付き確率」や「ベイズの定理」の知識が必須ですが、それ以前に高校数学の確率の単元について最低限の知識もなくてはなりません。無論メンデル遺伝について精通している事が土台にないといけませんが。

 

「条件付き確率」や「ベイズの定理」。はっきり言ってすごーく難しいです。遺伝カウンセラー認定試験の過去問にも疾患リスク計算の問題が出てきますが回答は記述ではなく選択方式なので、なんとかカンで点数取れてしまう事もあると思います。

 

実際の遺伝カウンセリングでこれらの知識を用いる事は多くはないかもしれません。なので、条件付き確率やベイズの定理について良く分かっていない遺伝専門医や遺伝カウンセラーは実際います。

 

でも、あくまで私の考えですけど、「知識がある上で遺伝カウンセリングに臨む」のと、「知識を持たずに遺伝カウンセリングに臨む」のでは、遺伝カウンセリングの内容に違いが出てくると思うのです。遺伝カウンセリングの深みというものが変わってくる気がします。

 

私が入った大学院では確率やベイズの定理について教えてもらえる機会がなかったので、私は仕方なく数学の塾に通って勉強し、何とか認定試験の過去問が解ける様になりました。

 

それで思ったんです。「条件付き確率」や「ベイズの定理」は、実際の現場で使わないかもしれないけれど、持っていないといけないスキルだなと。

 

逆に、これらがすらすらと出来る遺伝カウンセラーさんがいたら医師や患者さんも頼もしいと思うのではないでしょうか。遺伝カウンセラーの方・遺伝カウンセラーを目指している方はぜひ頑張ってほしいと思います。